HACCP
このページでは「HACCP」について解説します。HACCPの考えを取り入れた衛生管理計画を立案し、貴店の衛生管理に役立てましょう!
HACCPとは?
HACCPとはHazard Analysis and Critical Control Poinの頭文字をとったものです。日本語に直訳すると危害要因分析・重要管理点となります。
原材料の受入れから最終製品の出荷までの工程ごとに潜在的な危害要因を分析・特定した上で、危害の発生防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録する衛生管理手法であり、これは国連食糧農業機関と世界保健機関が合同で作成する国際的な食品規格であるコーデックス委員会から示され、国際的に認められた衛生管理手法であると言えます。
HACCPに沿った衛生管理は規模の大小を問わず原則としてすべての食品事業者が実施しなければなりません。ただし、食品の取り扱いに直接従事する者が50人未満の製造・加工等の事業場や飲食店営業または喫茶店営業等の小規模事業者の場合は業界団体等が作成する手引書を参考に、簡略化されたアプローチによる公衆衛生上必要な衛生管理を実施することができます。
一般的な衛生管理
さて、小規模食品事業者がHACCPに沿った衛生管理を取り入れる場合、「一般的な衛生管理をベースとして、必要に応じてHACCPに沿った衛生管理を取り入れる」というスタンスが望ましいのではないかと思います。ですので、まずは一般的な衛生管理を理解する必要があります。
一般的な衛生管理は、食品衛生法施行規則第66条の2第1項に基づく別表17に以下の14項目の基準が示されています。
食品衛生責任者等の選任
営業許可業種及び営業届出業種の営業者は、食品衛生責任者を選任しなければなりません。下記のいずれかに該当する者を食品衛生責任者として選任します。
- 食品衛生監視員または食品衛生管理者の資格要件を満たす者
- 調理師、製菓衛生士、栄養士、船舶料理士、衛生管理責任者、食鳥処理衛生管理者
- 都道府県知事等が行う講習会または都道府県知事等が適正と認める講習会を受講した者
食品衛生責任者は都道府県知事等が行う講習会を定期的に受講し、常に食品衛生に関する正しい知見の習得に努めなければなりません。また、営業者・経営者の指示に従って衛生管理にあたるとともに、衛生管理計画の作成と実施について営業者・経営者に対して必要な意見を述べるよう努めなければなりません。
施設の衛生管理
5S活動を実施し、食品への二次感染や異物混入を防止しなければなりません。また、窓や出入り口はじん埃、ネズミや昆虫等の侵入を防止するため、原則として開放したままにしないようにします。その他、施設・トイレ・排水溝及びその周辺の定期的な清掃や清潔な状態の維持を徹底します。
設備等の衛生管理
日常使用する計器類や装置類の定期的な点検や洗浄、消毒を行うとともに清掃用機材の適切な仕様と保管を行い、衛生保持に努めなければなりません。
使用水等の管理
水道法に基づき1年に1回以上水質検査を行い、成績書を1年間保存しなければなりません。貯水槽を使用する場合は条例に定められた管理基準を遵守するとともに第三者機関による検査を受ける必要があります。
ネズミ及び昆虫対策
ネズミ及び昆虫の侵入を防ぐため、網戸やトラップ等を適切に設置するとともに、1年に2回以上駆除作業を実施し、1年間記録を保存します。
廃棄物及び排水の取り扱い
下処理で発生するダンボールはネズミ及び衛生害虫の発生源や住処になり得ますので、決して放置することなく適切に廃棄処理をしなければなりません。
食品又は添加物を取り扱う者(食品等取扱者)の衛生管理
食品等取扱者の健康管理を実施するとともに、身だしなみに気をつけ、また、手洗いを徹底することにより衛生的な環境を保つよう努めなければなりません。
検食の実施
同一の食品を1回に300食または1日に750食以上調理・提供する場合、原材料と調理済みの食品ごとに清潔な容器(ビニール袋等)に入れ、冷凍で2週間以上保存します。その際、原材料は洗浄や殺菌をせず、購入時の状態で保存します。
情報の提供
消費者が健康被害を起こした、あるいは起こした疑いがある場合、地域の保健所に報告する必要があります。また、製品について異臭・異味の発生や異物混入など健康被害につながる恐れがある情報を得た場合、あるいは提供した製品が食品衛生法に違反するという情報を得た場合も同様です。
回収・廃棄
提供した製品が原因となり食品衛生上の気概が発生した場合、回収する必要があります。その際は他の製品と区分して保管し、適切に廃棄しなければなりません。
運搬
冷蔵品の積み下ろし中、ドアを開閉することにより急激に温度変化が起こるため、積み下ろし作業は迅速に行わなければなりません。
販売
食品の腐敗を防ぐため、直射日光を避け適切な状態で販売することを務めなければなりません。
教育訓練
営業者・経営者は、保健所等が開催する講習会や食品衛生関連の書籍・映像教材を用いて従業員に対して定期的に食品衛生知識の学習機会を提供するよう努めなければなりません。また、教育訓練が十分な効果を発揮しているか定期的に検証を行う必要もあります。
その他(記録と保存)
製品にトラブルが発生した場合、その原因を追究するためにも日頃から記録し、保存しておく必要があります。記録内容はあくまで食品衛生上の危害の発生防止に必要となる範囲で構いません。例えば食品の仕入元や出荷・販売先、製造・加工状態等です。
HACCPに沿った衛生管理
一般的な衛生管理に対して、「HACCPに沿った衛生管理」とはどんなものなのでしょうか。
危害要因の分析
原材料及び製造加工工程における潜在的な危害要因について、起こりやすさや起こったときの健康被害がどの程度なのかなどを明らかにします。
重要管理点の決定
危害要因の発生を予防、除去又は低減するための工程はどこか、あるいは重要管理点はどこかを決定します。
管理基準の設定
重要管理点を管理するための基準を決定し、この基準を達成することにより安全が確保されます。
モニタリング方法の設定
管理基準が常に達成されているかを測定・確認します。
改善措置の設定
行程中に問題が発生した場合、どのように修正して改善するかを事前に設定します。
検証方法の設定
計画が有効に機能しているかを検証します。
記録の作成
各工程の管理状況を記録します。
小規模な一般飲食店のHACCPの考え方を取り入れた衛生管理
本来であれば上記の「HACCPに沿った衛生管理」に基づき衛生管理計画を作成しなければならないところ、従業員数が数名程度の小規模一般飲食店事業者の場合、各食品等事業団体が作成する手引書を参考にして、簡略化されたアプローチによる衛生管理を実施することが認められています。これを、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」といいます。ここでは小規模一般飲食店事業者向けの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」について説明します。
参照:厚生労働省【HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書】
衛生管理計画の作成
衛生管理計画は「一般的な衛生管理のポイント」と「重要管理のポイント」の2つに大別されます。
一般的な衛生管理のポイント
一般的な衛生管理のポイントは以下の7項目です。「いつ」「どのように」「問題があったときはどうするか」の対応を記入します。
1:原材料の受入の確認
2:冷蔵・冷凍庫の庫内温度の確認
3-1:交差汚染・二次汚染の防止
3-2:器具等の洗浄・消毒・殺菌
3-3:トイレの洗浄・消毒
4-1:従業員の健康管理等
4-2:手洗いの実施
重要管理のポイント
重要管理のポイントは下記の3項目です。貴店のメニューの中で温度管理が必要なものについて下記の3つのグループに分類し、管理のチェック方法を記入します。
第1グループ:非加熱のもの
第2グループ:加熱するもの
第3グループ:加熱後冷却し、再加熱するもの
衛生管理計画の実行
衛生管理計画に基づき、衛生管理を実行します。
実行内容の確認及び記録
衛生管理を実行したら、その実行内容を確認し、記録します。何か問題が生じた場合は、その問題に対してどのように対処したのかを含めて詳細に記録します。
フィードバック
週に1回もしくは月に1回、定期的にフィードバックする機会を設けます。同じような問題が繰り返し発生している場合は衛生管理方法の見直し及び対応の検討を行います。
一連の記録は最低1年間は保管します。紙ベースだけでなくクラウド等にデータとして保管することが望ましいと言えます。保健所より提示を求められた場合は速やかに応じることができる体制を整えなければなりません。
まとめ
HACCPは衛生管理計画を立案することが目的ではなく、見える化することによりPDCAを図り、自主的に衛生管理のレベルアップを目指し、食品の安全性の確保をすることが目的です。一度取り組んで終わりではなく定期的に・継続的に取り組むことにより効果が得られます。
食品に関わる全ての事業者が実施すべき取り組みです。まだの方は是非ご検討ください。