食中毒について
飲食店経営において、食中毒の問題は避けて通れません。有害な微生物などに汚染された飲食物を摂取することにより健康被害を起こし、時として生命を失うことさえあります。
まずは食中毒について正しく知り、適切な対策を取る必要があります。
食中毒の発生時期と発生状況
食中毒は高温多湿の6-9月にかけて多発する傾向がありますが、それ以外の時期(特に冬季)にかけてノロウイルス等によるウィルス性食中毒が多発しており、結果として年間を通じて食中毒が発生していることになります。
また、食中毒の発生原因施設は事件数・患者数共に飲食店が50%以上を占めています。事件数としては飲食店・家庭・販売店の順ですが、患者数は飲食店・旅館・給食施設となります。これは、一度旅館や給食施設で発生すると患者数が急激に増えるからです。
主な食中毒とその感染経路・症状・予防対策
サルモネラ属菌
主な感染経路
- 食肉
- 鶏肉
- 卵
- ウナギ
- スッポン
症状
- 12-48時間で発症
- 下痢、発熱、腹痛など
予防対策
- 食肉等は低温管理
- 中心部までよく加熱する
- 手指や調理器具はその都度洗浄消毒する
腸炎ビブリオ
主な感染経路
- 魚介類
症状
- 8-24時間で発症
- 腹痛、下痢、吐き気、発熱など
予防対策
- 真水に弱い為、魚介類を水道水でよく洗浄する
- 魚介類の低温保存
- 調理・製造後の器具洗浄を十分に行う
腸管出血性大腸菌(O157など)
主な感染経路
- 牛肉
- 羊肉
症状
- 潜伏期間は3-8日
- 下痢、腹痛、発熱、嘔吐
予防対策
- 食肉の加熱調理は中心部まで十分に行う
- 食品の保存は低温で行う
※牛レバーは生食用として販売・提供が禁止されている
カンピロバクター
主な感染経路
- 鶏肉
症状
- 潜伏期間は2-5日
- 下痢、腹痛、吐き気、発熱
予防対策
- 鶏肉は中心部まで十分加熱し、生食を避ける
- 調理や飲用水などとして未殺菌の水は使わない
ウエルシュ菌
主な感染経路
- 食肉
- 熱に強い芽胞を作る
症状
- 潜伏期間は平均10時間
- 腹痛、下痢
予防対策
- 前日調理を避ける
- 保存する場合は速やかに低温保存する
- 次の日に使用する場合は、まんべんなく火が通るように食品をかき混ぜながら中心部まで十分に加熱する
セレウス菌
主な感染経路
- チャーハン
- スパゲティ
- オムライス
症状
- 嘔吐型:1-5時間で発症。吐き気、嘔吐など
- 下痢型:8-16時間で発症。下痢、発熱、腹痛など
予防対策
- 前日調理を避ける
- 冷蔵で保存する
黄色ブドウ球菌
主な感染経路
- ヒト、哺乳類、鳥などに生息
症状
- 潜伏期間は2-3時間
- 激しい嘔吐、吐き気、腹痛、下痢
予防対策
- 調理者の手洗いを徹底する
- 指に傷や化膿がある場合は調理をしない
- 調理時には使い捨ての手袋やマスクをする
ボツリヌス菌
主な感染経路
- 瓶・缶詰食品
- 真空包装食品
- レトルト類似食品
症状
- 潜伏期間は8-36時間
- 胃腸炎症状、神経麻痺症状
- 呼吸困難や死に至る場合もある
予防対策
- 新鮮な原材料を用い、洗浄を十分に行う
- 瓶・缶詰等は120度・4分間またはこれと同等以上の効力のある殺菌処理を行う
食中毒を防ぐために
食中毒を防ぐために私たちは何をしたらいいでしょうか。「つけない」「増やさない」「やっつける」は食中毒予防の3原則と言われています。
細菌やウイルスを食品につけない:二次汚染を防ぐ
- 食品を取り扱う設備や器具、容器を清潔に保つ
- 調理従事者自身の健康管理をする
- 清潔な服装や手指の洗浄・消毒・手洗いをする
- 生肉、生鮮魚介類は容器に入れて冷蔵庫の下段に保管する
- 食材ごとに器具類を使い分ける:包丁やまな板は肉と野菜で同じものを使わない
食品中の細菌を増やさない:菌が増える温度を避ける
- 仕入れた食材や調理済みの食品を冷蔵・冷凍保管する
- 調理後、提供までに時間のある食品は10度以下または60度以上で保管する
食品中の細菌やウイルスをやっつける:熱に強い芽胞形成菌に注意する
- 加熱調理食品は中心部が75度で1分以上加熱する
- ノロウイルス汚染の恐れのある食品は85-90度で90秒以上加熱する
- 野菜類は必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌
まとめ
食中毒の発生原因施設で最も多いのが飲食店です。仮に食中毒が自分の店で発生してしまうと営業停止処分を受ける可能性もあり、更には顧客からの信頼も失い取り返しのつかない事態になる可能性があります。そうならない為にも、日頃から衛生管理を徹底し、食中毒を「つけない・増やさない・やっつける」の3原則を常に意識して、安心・安全な食品提供を心がけましょう。